業務中に病気やケガをした場合、労災が適用され給付や支援を受けることができます。
派遣社員のなかには、「非正規雇用でも労災保険は受け取れるのか」、「労災保険を申請すべきか」といったことで悩んだ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、労災に遭った際に派遣社員でも請求できる労災保険について、受給できる補償内容や請求の流れ、事前に知っておくべきポイントを紹介します。
労災保険とは、業務中や通勤時に病気やケガを負った際に、給付や支援が受けられる補償制度です。労働者を雇用する企業には加入が義務付けられており、正社員だけでなく、アルバイトやパート、派遣社員も含めたすべての労働者が労災保険の対象になります。
受給できる補償内容としては、業務上でケガや病気になった場合の治療費や休業補償、死亡した場合の遺族に支払われる遺族(補償)等給付、被災した労働者への社会復帰促進支援、通勤途中で事故に遭った場合の給付などがあります。
派遣社員が業務中にケガをして労災給付を受ける場合、いつ、誰に相談すべきでしょうか。
実際に労災の申請をする際は、事故後に派遣先と派遣元にそれぞれ相談や報告をし、労災保険を使用したい旨を伝えます。労災保険の請求先は雇用主である派遣元となりますが、事故が起きた派遣先にも事故状況などを証明してもらわなければなりません。必ず、派遣元と派遣先の企業に相談をしましょう。
労災の給付を受けるには、労働基準監督署へ請求書、必要な場合には領収書や診断書を提出する必要があります。申請手続きは雇用主の派遣元が行うので、派遣社員が労働基準監督署に赴くことはありませんが、何らかの事情がある場合は、自ら申請・手続きを行うことも可能です。
提出した書類をもとに調査を行い、要件を満たした場合に労災の認定がおります。請求書などが受理されてから給付までは、およそ1〜3ヶ月とされています。また、請求書類の内容に不備がある、労災認定の判定が難しいといった場合には、給付までさらに時間がかかる可能性もあるため、できるだけ積極的に調査に協力するようにしましょう。
労災を申請するには相談や手続きが必要ですが、治療費の負担を減らせる点がメリットです。労災申請を行わないと、業務とは関係ない傷病扱いとなり、健康保険または国民健康保険で治療を受けることになります。労災保険は労災病院などで治療を受ければ負担はゼロです。一方、健康保険や国民健康保険で治療にあたる場合、窓口で3割は自己負担をしなければなりません。
また、休業補償に関しても健康保険の「傷病手当金」では、休業補償期間が最大で1年6か月に対し、労災保険では補償を受給できる期間に上限はないといったメリットもあるのです。
ただし、労働者にとって労災保険を使用したことで評価が下がり、査定に響くのではないかと考えてしまう方も多いのではないでしょうか。
実際は、労災を申請したことで不当な扱いや派遣を解雇されることはなく、労災申請を理由に解雇を行うことは法律で禁止されています。派遣元が労働者を解雇するには制限があり、休業中とその後30日間は原則解雇ができません。ただし療養期間が3年経過した際に、平均賃金1,200日分の打切補償を支払うことで解雇制限が解かれます。
その他、労災で休業中に契約期間が満了になった場合であっても、労災の補償は雇用契約の有無に関わらず、治療が完了するまで引き続き補償される点は覚えておきましょう。労働保険料についても、労災申請すると保険料が上がると考える方も多いようですが、実際はメリット制を適用しない事業所では上がることはありません。